木古い建物を見ていると、シンプルで本質的なものと強烈に感じますが、造作を見ると奇をてらったものではなく、密かにさらりと粋な演出をしているものに出会います。
例えばこの建具。
昔よくあった格子戸です。
下が鏡板を貼り、上が千本格子。
日本的で美しいよね。
近づいてみると・・・
゜一本ずつ釘止め。格子鋲と言います。こんな形状だよ。
細い桟に細かく格子を均等にとめていくので、大変な作業。
技量が必要です。
写真の格子鋲はちょっと上下して真っすぐになってませんが(笑)パッと見は一直線できれいだよ。
格子の裏のガラスに注目。
波模様です。格子のところにわざわざやらなくてもいいのではと思いますが、こういうところがお洒落なところなんです。
さりげなくやっている。奇をてらわない。
こういうちらりと見える、ふとした時に気づくものって存在すら忘れてしまいますが、家に溶け込んでいます。
そういうものだからこそ、よけいに愛おしく感じる。
奇をてらって格子を斜め格子にしたらさりげなさは無くなります。
釘も打たずに接着剤で引っ付けることも可能な現代で、そのようにしたら鋲の存在がなく、つるんとしたものになります。
住宅は住む人と溶け込むのが大切。奇をてらった家は飽きられる。最初だけです、いいと感じるのは。飽きる。
シンプルなつくりこそ溶け込む大切なポイントだし、愛着も湧く。
後世も受け継ぐ。古建築のいいところはシンプルなこと。
だから皆が見に行く。
自宅もそうしましょうねー。