先日、名古屋市から依頼を受けた耐震診断を2棟実施してきました。
2棟とも二階建てと平屋という構成の当時の典型的なデザイン。
現在は総二階が一番耐震に強いという理由で多くが総二階建てになっているよね。
でも旧耐震時代に建てられた建物は当時誰もが目標としていた「マイホーム」。
デザイン良く!が主流でしたよー。
この絵は玄関が妻入り(屋根の三角部分に玄関があるのを妻入りと言います)で、当時は滅多にない形ですが・・・玄関は軒の庇が流れる部分に設定するのが基本と言われていたからね。
このように一階部分の一部に二階建てがあると、二階部分の壁が一階部分と同位置にあることが少なくなるのが定番。
すなわち直下率が下がるという事です。
直下率は60%以上が必須。
総二階建てにすると直下率は必ず60%以上行きます。
絵のようにするとその%が下がるのでそこを補強という形になるのです。
当時の棟梁たちはそれを理屈抜きで理解していて、二階が載る部分は太い梁を入れたり、要所に柱を入れたりしています。
そこが凄いんだよなー。
木軸構造の基本を叩きこまれた棟梁の為せる知識。
私の親方もそうでしたが、私も同じです。
軸の組み方一つで家の強弱が決まる。今のように耐震面材、制振部材がない時代なので、木軸のみで強くするという考え方が当たり前でした。
面材が出来たことで、細い構造躯体でも耐震の数字が出てしまう。
木軸の基本がなくても耐震等級〇!!!ですという。
これは木軸の伝統を消してしまうことではないかと危惧します。
伝統=文化。
伝統の滅失=文化の崩壊。
脈々とつないできた国の文化が消えてしまうのはいけません。
基本は木軸、そして補助で耐震面材や制振部材。この考え方を変える気はないし、変えてはならないと思っています。