旧家には建物以外のものに日本人の知恵が詰まったものがいっぱい残っています。先日伺った築60数年のお住まい。
桐ダンスはまさに叡智が詰まってる逸品。
うちの奥方も花嫁道具で持ってきたよ。まだそんな時代でしたねぇ。鉄製取手。
鉄の薄板を打ち抜いてる?模様は桐の葉に花。
手打ちだと思う。
引き戸の引き手。使い込まれた風合いは本物の鉄だから。
丁番は真鍮。手打ち。
引き出しの引き手。鉄製。
時間が経てば経つほど美しいものと言うのは、本物の素材を使っているからです。桐の板も堂々たる色やけ。
桐の木は成長が早く、娘が生まれると、庭に植樹をして嫁に行く時に、その木を切ってタンスを作ると言う流れが昔にはありました。それだけ成長が早い木なのです。
火事になったときに、桐のタンスだけは燃えません。理由は、1つの引き出しを元に戻すと違う引き出しが自然と出てくるのが上等な桐タンスです。それほど密閉度が高いもので、燃えるための酸素が少なく中のものは、火事でも守られる。これを昔はよく聞いたものです。
大切なものは全て桐のタンスに入れる。これは過去の日本人のスタンダードでしたよ。
調湿作用も抜群なので、着物を入れても虫が食わない。このような先人たちの知恵がどんどんなくなっていく今です。なんでもかんでも新しいものが良いのではなく、古いものはそこから学ばなければなりません。最近は歴史から学ぶという言葉がしばしば出てきますが、歴史は先人たちが経験した道なのです。災害1つ、生活の仕方、1つ、歴史に学ぶことも必要なのかなと、このようなものを見るたびに思う私です。