代々続くお店を経営されているお客様がいます。30年近く前に増築を含む大規模リノベーションをさせていただきました。
増築部分には蔵がありました。土蔵。それを壊して増築して母屋とつないでという計画。
土蔵を解体するので、大切なものを整理整頓されていましたが、私にこれをくださいました。硯箱。
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中には硯と墨と筆。これを使って上棟札を書いています。
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鉄製の金物類。
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手打ちで形を整えたアイアンだとわかるよね。
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引出しの引手。
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鍵穴。鍵はなかったけどね。大切なものを入れるように作ったものだと思います。
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材はケヤキです。
明治中期の建築。太平洋戦争の空襲にも耐えて残ったお店。この硯箱は100年以上は経過している。でも現役。
いただいた時のことを鮮明に思い出します。
木は原理原則通り使ってあげれば、ずっと使えるという証でもあり。
筆を持つたびに、下ったお客様の姿とその時の光景を思い出す。決して立派な硯箱ではないけど、ここには歴史が詰まっている。新建材では歴史は刻まれないよね。
無垢だから、そして手作りだからこそ刻まれた歴史。時空を超えてという言葉がぴったり。
まだまだ大切に使うよ。
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