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お師匠さん

お師匠さんと出逢ったのが28歳の時。
35年も前です。
大工組合青年部主催の経営セミナーという企画があり、青年部にいた私は青年部長から「植山!!!来ないかんからな!!!」と強制命令。
普段大工仕事やっているから、途中で抜け出してなんてことはタブーなのにと思いつつ仕方なく参加。
どうせつまらないセミナーだろうと思い、わざと遅れて参加。1時間遅れです。
遅れて入って講師が言った言葉に血が上る。
「オレの会社の協力業者会では、遅刻した奴は入れないことになっているんだ。だって随分と前から予定がわかっているのに、その約束も守れねぇ奴なんてちゃんとした仕事ができるわけねぇだろ!」といきなり耳に入ってきたのです。

バリバリの江戸っ子で言葉尻も腹立たしくてねー(笑)


「このおっさんが~何を言いやがる」と血気盛んな私に血が上るのも無理はないです。

食いつくように話を聞きだした私に脳天を砕かれた一言が刺さりました。
「お前たち大工は、てめぇが作った家は100問年持ちますと言うくせに〝紙に10年保証します〟とは書けねぇんだからだしないったらありゃしない。だからお前たち大工はダメなんだよ!!!」

「これ、俺じゃんか」と目が覚める。
「住まいづくりは心のサービス」「建設業は信用業。現物も何もないんだから。信頼してもらえないと任せてもらえないに決まってるだろ」

終わった後に懇親会がありましたが、茫然自失の自分は帰宅して頂いた資料を夜中まで見ていました。

この時です、名古屋でこんな会社になろうと決めたのは。
そしてお便りを書く。
感謝の気持ちです。目が覚めたと。

一週間後、ドカッと小包みが届く。お師匠さんからでした。
経営計画書、著書、チラシ、パンプレットなどを見て心が震えました。
その時に電話が・・・お師匠さんからでした。
「植山君、私はあなたのことを知らないけどお便りありがとう」と。
その場で訪問のお約束をさせていただきました。
一週間後埼玉に行く。
朝2時に出て、ついたのが8時。
ナビなんかない時代だから地図頼りでよくも遠路いったものですわ。
10時に伺う。緊張しまくり。
現場を見せていただく。かっこよかった。職人さんも現場も凛としていた素敵だった。
作っている建物自体が本物の木の家で感動した。
お昼ご飯をお師匠さんが建てた寿司屋さんでいただいたけど、緊張してほとんど食べられなかったな・・・

その時にいただいた資料の中の一つがこれ。

建て方などで餅投げと一緒にご近所に配るものとのこと。
お師匠さんの会社は㈱こもだ建総。埼玉大宮にある。
お師匠さんは10年ほど前に他界され、今は娘さんの婿さんが代表者。
これ、私の宝物で机の前にずっと置いてあります。
「真似さえできない野郎が新しい事なんかできはるわけないだろ」「うちのいいところがせあれば真似すればいい」といつも言ってくれたお師匠さん。
建て方の時に上棟札を書きますが、これはお師匠さん由来のもの。
「真似も続ければ自分のものになる」とおっしやってたけどせ、まさにその通りでオリジナルになっています。

「極めるに原点を知る」という言葉も頂きました。
今、私が営業マン、設計マン、積算、工事監理、アフターと全て一気通貫してやっていることはまさに原点です。

お師匠さんからいただいた御恩はぶれずに貫くこと。時流に流されない。
いいものはいい、ダメなものはダメで貫く。
「自分の家だったらどうする」といういつも浮かぶ言葉も「極めるに原点を知る」大切な一言。
工務店魂はお師匠さんから受け継いだものだからね、妥協なんかしないよ。
貫くのみ。

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